Earth Design Project

ひとりひとりから始まる あらたな ヒト/HITO の ものかたり
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イの流(ち)


 カナダのユーコン準州に住んでいる 知り合いのカメラマンが、この連休 帰国して京都で写真展を開きます。先ほど訪れた彼のブログで 改めて見た個展のタイトルは 「Northern Life 極北の生命 ーWILD SHEEP COUNTRYー」。
 “生命” という文字に反応し、わたしが 彼の写真のなにに惹かれるかの理由が わかったような気がしました。そして、過去記した文章で 自身のブログにアップしたいと思いつつ未だできていないものの中から いのちに関するものを アップしておきたくなりました。
 ということで 今年の2月6日に書いた文章を 以下 転載します。

///////////


先月の下旬 久しぶりに友人と ある温泉へ行きました。
その温泉のご主人は “いきもの” として温泉を認識しており
そのままでは熱すぎる源泉を 水で薄めることなく熱交換装置で適温まで下げ 浴槽に掛け流しています。
   温泉は新鮮であるべし
   湧きいづるその瞬間が もっとも エネルギーに満ちている
地球の 火と水と土が生み出した いのち としての温泉の
その生命力 エネルギーを
そのまま生かしたい と考えておられるようです。

自宅から2時間以内で行ける地に この温泉を見つけて以来
他の温泉には あまり行っていないので 比べようがないのですが
これまで訪ねたところを思い出しつつ 言うなら
この温泉の湯は 力があると 感じます。
とにかく 疲れの出方が すごい のです。
疲れだけでなく 心身に溜まったものも 出てきます。
一緒に行く友人との関係性もあるのでしょうが
この温泉で過ごす時空の中で いろんなものが一気に動く感覚が いつもあります。
し、先日は特に 時空の濃さを実感しました。

そんなことを思っていたら
その温泉が出している瓦版の中の 「温泉の本質」と題した内山節さんの文章に 目がとまりました。

***


<自然の「おのずから」なる流れ>
 温泉は薬効成分ではないのだということが、最近になってようやくわかった。地底からわき出てくるお湯の力を借りて、自然と人間の力強いつながりを取り戻すことの方に、たぶん、温泉の本質はある。
 日本の伝統的な民衆思想では、自然は真理である。なぜ真理なのかといえば、自然は「おのずから」のままに展開していて、一切の作為がないからである。昔の人たちはそう感じていた。作為がないということは「おのずから」のままに流れているということで、自然にはこの流れを押しとどめるものがない。

***


この1〜2年、おのづから ということについて よく考えます。そして いま思っているのは おのづから とは シンカの流れ ではないか ということ。自然栽培の農産物や 天然菌を生かした発酵品がおいしいのは そのものや育まれるプロセスが持つ「おのづから」 つまり「シンカの流れ」を尊重し 生かしているからではないだろうか と。自然が 宇宙の理/流の顕われであって 理/流そのものではないように、自然のままだからいい というわけではありません。その背後に流れるものを見据えて それに添いながら 乱すことなく より生かしてゆく…。きっと 私のお気に入りの温泉のご主人も 同じ意識をもって 温泉 というものに対しているのではないでしょうか。

「ヨーロッパでは 動いていない水は死んだ水と見なす」と 知人が言っていたのを思い出します。動いていない水とは 澱んだ水であり それは腐ってゆくもの。ヨーロッパでガス入りのお水が多く飲まれるのは 水に動きが生まれるからだし、アルコールが聖なるものとされたのは それが腐らない水だったからだ(*他の理由もあるのですが)と。そして ベネシアンドールがビノ・デ・ヘレス(=シェリー)を ベネンシアという長い柄杓を使って 高い位置からグラスに流し入れるのは 動きのなかった水にいのちを与える行為なのだと 話してくれたのでした。欧米人がシャワーを好むのも 彼が言うには同じ理由によるのだそうです。

わたしが ここで言う いのち とは 生物学上の生命 とは違う概念です。動き… いえ 宇宙の理としての流れ を いのち と名づけているのかもしれません。

今日は朝から雨。
天から落ちてくる雨の浄化のハタラキ…
これも いのち ゆえのことなのでしょうか。





【コメント】(2012/02/17)
この文章を書いた後 別の 源泉掛け流しの温泉へ行く機会がありました。本文中の温泉が無臭であるのに対し 硫黄臭のある匂いのキツいお湯でしたが 肌への当たりはこちらの方が優しく、しかし 心身へのハタラキは 勝るとも劣らぬもの。かつて女帝が数年滞在したという伝説が残る 山間(やまあい)の地で、少なくとも奈良時代まで遡ることのできる歴史(=時空)に護られてきた いのちあふれるお湯でした。


【コメント】(2012/02/17)
ナショナルジオグラフィックのニュースによれば、2月13日に「地球で最初の細胞を持つ生命体は 火山による蒸気で熱せられ、ぬるぬるした泥がたまる熱泥泉で生まれた可能性が高いとの研究結果が発表された」そうです。
まだ確定したわけではありませんが、もし本当だとしたら 温泉で得られる安らぎの源泉は こんなところにあるのかもしれないなぁ…と、泥の混じった温泉に入った時のことを思い出したりもしました。


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